昨今、円安による輸入コストの増加や、燃料・資源価格の高騰により物価上昇に歯止めが効かなくなっていますね。
様々なモノの値上げラッシュが起きる中でも、私たちの暮らしに密接に関わってくるのが「食品」ですよね。
消費者の「価格を見る目」は厳しくなったように感じますが、食品の「安全性」については、どこまで意識できているでしょうか?
いまや私たちの食生活において、切っても切り離せなくなった食品添加物や加工食品。「なんとなく体に良くない」と分かってはいるものの、どこまで意識したら良いの?
それがこちらの「素朴な疑問」です。
(2024/12/22 03:37:57時点 Amazon調べ-詳細)
情報社会の現代では、食品についても様々な情報が散見され、どれを信じたら良いのかわからない・・・という悩む人も少なくありません。
添加物や加工食品について深堀りしたいと思っている方は、この1冊で大体のことは網羅出来ます。
著者、安部司さんの伝えたいこととは
食品に疑問を持つことの大切さ
著者の安部司さんは、かつては加工食品を製造する会社に勤めていました。
加工食品・添加物を開発し、駆使する側にいたからこそ、様々な食品のカラクリ(裏側)を知っている、というわけですね。
しかし、家族が加工食品を食べようとしていた際、自分が作っている側にいるのに「食べてほしくない!!」という矛盾が生じ、居た堪れなくなったそう。
そして、現在は、ありのままの添加物の裏側を伝える立場で、食生活の改善を呼びかける活動や、無添加食品の開発などに携わっています。
突然ですが、皆さんは疑問に思ったことはありませんか?
- ノンカロリーなのに、甘いのはどうしてだろう?
- ファミレスでコーヒーミルクが取り放題なのはどうしてだろう?
- カロリーハーフなのに、どうして同じ味ができるのだろう?
もちろん、これらにも「全てカラクリがある」というのですねぇ~。(※特別に本の中身の一部を抜粋)↓↓↓
- 甘い清涼飲料水のカロリーを抑えるためには、強烈な甘味を感じさせるよう、自然界にはない「合成甘味料」が大量に使用されている
- ファミレスのコーヒーミルクは、実はミルクなんかではなく「乳化剤」や「増粘多糖類」を組み合わせ「香料」でミルクの香りをつけたもの
- カロリーハーフの商品には、油を半量にする変わりに「増粘安定剤」や「加工でんぷん」等の、本来は入っていない多くの添加物が使用されている
な、なんだか、これらを知ると「カロリーハーフでラッキー!」「ミルク取り放題でラッキー!」だなんて言っている場合ではない、、、ということに気付いちゃいますね。
その他にも、様々な食品の裏側について惜しみなく教えてくれているので「面白い!」「もっと知りたい!」と、読み進めているうちに、どんどん賢くなっています(笑)
しかしですね、著者の安部さんが伝えたいことは、これら添加物や加工品を摂取することが「悪い」ということではないんです。
大切なことは、それこそタイトル通り「疑問を持つこと」なんですよね。
どうして、この値段で売れるの?どうして、カビが生えないの?素朴な疑問を持ってみること。
気になったら「ちょっとラベルを見てみようかな」と手首をひっくり返す(これを安部さんは「手首の運動」とユニークに表現します。笑)
不思議に思ったら、調べてみて下さい。(今はグーグル先生がなんでも教えてくれますからね!)その、ちょっとしたひと手間が、きっと未来の自分の身体を変えることに繋がります。
食品に「健康」や「安全安心」を求めるのならば、ただ何となく安いものではなく、しっかり目で見て頭で考えて選んでいかなければいけない時代です。まずは素朴な疑問を持ち「手首の運動」を心がけていきたいですね。
添加物のメリット・デメリット
食品添加物を考える上で大切なポイントは「メリット(長所)・デメリット(短所)を同時に考える」ことだ、と安部さんは言います。
この、「同時に」という所がミソなのですが、それがなぜかは、後に分かります。
添加物には、主に以下の5つの働きがあると言われています。
- 「安くなる」 安価な「もどき」を作れる。
- 「簡単になる」 製造、調理の手間を省ける。
- 「便利になる」 代表選手のカップ麵やレトルトには「しっかり」入っている。
- 「きれいになる」 「色・つや・透明感」には危険性が隠れている。
- 「オイシクなる」 素材本来の「おいしさ」とは全くの別物。
一つ一つ説明すると長くなるので割愛しますが(本書の中では、項目ごとに丁寧な説明があるので必読です)
要は、いかにして原材料を安い素材に置き換えてコストを下げるか。出来るだけ安く、簡単便利でおいしい味を再現するために使われているのが「添加物」というわけですね。
そのおかげで、私たちは簡単便利で、いつでもどこでも、それなりの美味しさが味わえるようになりました。
値段も比較的安定していて手に取りやすい。これは添加物の大きなメリットですよね。
しかしその一方で、発がん性が見つかったり、人にとって大切な味覚が衰えたりすることは、添加物のデメリットでもあるでしょう。
例えば、、、
- 「マーガリン」や「ファストスプレッド」
欧米では心臓疾患の原因になるといて厳しく制限が設けられている「トランス脂肪酸」日本では規制フリーです。そのため、マーガリンやファストスプレッドに大量のトランス脂肪酸が含まれているとは知らずに、毎朝たっぷり摂取してしまっている人も多いわけですね。
- 「カロリーハーフのマヨネーズ」
カロリーや脂質を制限しなくてはいけない人にとっては、上手に使えば良い食品になるでしょう。実際に、私が看護師をしていた時、メタボの患者さんの食事指導の際に、栄養士さんがカロリーハーフを勧めていたのも聞いた覚えがあります。しかし、安心して倍の量を使ってしまえば当然同じカロリーですし、本来のマヨネーズには入っていない添加物も沢山摂ることになってしまいます・・・。
メリットとデメリットは、どのような事柄でも発生します。しかし、食品添加物において最も怖いのは「デメリットがすぐに表れない」ということです。
発がん性が指摘されている添加物を摂取しても、すぐにがんを発症するわけではないし、口にした途端に体調が悪くなることもありません。
でも「危害が出ていない」ことと「安全である」ことは全く別物です。デメリットによる影響が目に見えにくいからこそ、大半の人は、目の前の安さ、便利さというメリットを優先してしまうのですね。
- 添加物から離れる食生活→「安さ、便利さ、手軽さ」からは遠ざかる。しかし健康面のデメリットは少ない。
- 添加物に頼る食生活→「安さ、便利さ、手軽さ」は得られるが、その分だけ健康面のデメリットは増える。
以上のことから「メリット・デメリット」を同時に把握し、どのように取り入れていくかを考えてみることが大切だと言えますね。
余談ですが、うちはトランス脂肪酸不使用のマヨネーズを使っています。その他の調味料もほとんど無添加のものを揃えています。添加物が入っていないことで、「少々値段が張る」「賞味期限が短い」などのデメリットはありますが、調味料は毎日使うものなので、「安全安心」というメリットを最優先するようにしています!
食品メーカーのしたたかな思惑に乗せられないために
”脳と味覚は密接に関係している”ということは、ご存知でしょうか。
と、いうことは?「脳を錯覚させられれば、味も変わる」ということですよね。
こんな面白い実験は知っていますか?
子供に人気の炭酸飲料水「ファ〇タ」
様々な種類の味がありますが、実は香料と着色料が異なるだけで”あとは全部同じ”という話です。飲む側の思い込みを利用することで様々な種類の味を演出していますが、言ってしまえば目を閉じて鼻を塞いで飲めば全部同じ味のサイダーってわけなんですね。
そして最近よく見かけるのが「1日分の野菜」や「レタス5個分の食物繊維」「レモン100個分のビタミンC」などといった、健康をうたう商品。
これらにも、売る側の実に巧妙なテクニックが隠されているというんですねー。
このカラクリはというと、実はレタスやレモンの中に含まれている食物繊維やビタミンCの量は、他の野菜に比べてそう多いわけではない上に、人工的に作り上げた繊維質を加えて健康的なイメージを膨らませている食品が多いというのです。
野菜ジュースにしても、搾る時に繊維質は除かれ、加熱濃縮される工程でビタミン、ミネラルなども減少。減った成分は後から添加物を加えて帳尻を合わせたとしても、素材から摂る野菜とは根本的に違うのです。
脳の錯覚により、食事がオイシク楽しくなる部分もあるので、そういう部分は大いに騙されたいところですが、メーカーの思惑に乗せられすぎないように気を付けたいところです。※冒頭の「ファ〇タ」ですが、私は好きです!!
食品メーカーと消費者の関係を”「思わせぶりのあんたが罪か」「思い込んだ私がバカだったのか」男女のすれ違いを歌う演歌のようだ”と表現する安部さんにはやられましたね。(笑)
過去、200品目以上の加工食品を開発してきた安部さんの「今だからこそ話せる開発こぼれ話」など、ところどころクスッと笑えるのも、本書の魅力です。
添加物を出来るだけ排除する方法
基本の調味料だけでも安心なものを使う
出来るだけ安心安全で、健康な食事ができれば、それに越したことはないのですが、食品すべてを国産や有機にしようとしても、色々大変ですよね(^^;)
経済的にもやさしく、多くの添加物を排除できる方法はないのでしょうか?
あります!!
それは「基本の調味料だけでも化学添加物の無い安心なものを揃える」ことなんです。なぜかというと
- 野菜やお肉などの食材は毎日違うものを口に入れても、料理に使う調味料は大体毎日一緒だから。
- 市販の調味料には、合成のうま味調味料などの添加物が多く含まれているから。
なので、まずは調味料だけでも無添加にこだわってみるのが効果的なんですよ。
この本の中では「添加物に頼らない、ごまかされない、無駄遣いをしない」を三原則に、安くて簡単なおいしい調味料の作り方を紹介してくれています(^^♪
丸大豆から作る「万能かえし醤油」、使いこなしやすい「甘酢」、超簡単で多用途に使える「タマネギ酢」、アルコール控え目のやさしい「みりん酒」、中・韓・和風に使える「甘味噌」などなど、どれも目からウロコのレシピばかりですよ!
少し手間は掛かりますが、昔ながらの日本の調味料や発行食品は、手間と時間を掛けてこそ世界に誇れるものになりましたからね。
冷蔵庫を上手く使う
近年の冷蔵や冷凍の技術は凄まじいですが、我々一般ピープルには届いてこないプロの加工ワザがあるようです。
ラインナップをざっと紹介しますね(^_-)-☆
- エビの冷凍保存 →臭くならずに、簡単に解凍できる保存方法があるなんて!
- コンタクトフリージング(接触冷凍) →急速冷凍で味の劣化を防げることに感動!
- 果汁を凍結濃縮 →果実の悩み「旬の時期は余るし、旬を過ぎたら無い…」を一発解決!
- 冷凍乾燥を防ぐ一工夫 →「台所にあるもの」でパサパサを回避できるとは!
- 凍らせて時短 →「細胞を残した方がいい場合・壊した方がいい場合」冷凍の悪影響を逆手に!
- 便利な家庭用不凍液 →冷凍庫でも凍らない「アレ」を利用する!
- 冷蔵庫でアジの干物を →新鮮な魚といい塩で試したい!
- 簡単ハリハリ漬け →冷蔵庫が「乾燥庫」代わりになるとは!
- 手軽にみりん干しを →魚嫌いな子でも甘くて食べやすい「みりん干し」を簡単に作れるとは!
その方法は、本書の中でイラストなども交えて解説してくれているので、気になる方は必見です!!
(2024/12/22 03:37:57時点 Amazon調べ-詳細)
その他にも「飲み物と添加物の関係」という章では以下のようなことが学べました。
- 日本酒のあれこれ →「アルコール添加物」の勉強になりました。
- 日独でちがう「ビール」の定義 →何も考えずビールを選んではいけない・・・(^^;)
- スポーツ飲料は子供に飲ませて大丈夫? →体のことを考えて作られているはずなのに?
- ノンカロリー飲料の罠 →合成甘味料なら「糖」ではないから良いのか・・・?
又、前章で取り上げた「基本の調味料」を賢く使う方法や「だしを上手く使う」調理法などもあり、大変参考になりました。
「食品選び」で重要なこととは
ここまで、食品に素朴な疑問を持つことや、添加物のメリット・デメリットを考えることの必要性などを述べましたが、あくまで「判断するのは自分自身」です。
自分が優先したいのは何なのか、それに尽きます。
「安心安全」「健康」「時間」「値段」「家族団らん」人によって大切にしたいことは違います。
結論、突き詰めれば、この二者択一になるそうです。
- 添加物の持つデメリットを避けたいなら、素材から手作りした家庭料理を食べる。それなりのお金を出して安心できるレストランや食堂に行く
- 調理する時間や手間、食費にかけるお金をデメリットと感じるなら、添加物の入ったそれなりのものを食べる
メリットの良いとこ取りはできないので、自分にとって何がメリットで、何がデメリットなのか。自分がこのメリットを得るために、どのようなデメリットを引き受けられるのか。
優先順位を明らかにしなければなりません。食には「それくらい突き詰めて考える価値がある」と安部さんは言います。
そのために必要な知識は本書に十分すぎるくらい詰まっているので、この機会に、一度食について真剣に考えてみませんか?
まとめ
単純に、食生活の改善を提案する本とは少し異なり、食品の裏側を知り尽くしている安部さんだからこそ書ける豊富な知識と「食事は体・心を育むもの」という、強い思いが詰まった一冊でした。
現代の食事情を「怖い怖い」と煽るわけでもなく、淡々と解説してくれているところが個人的には読みやすくて良かったです。
何といっても、添加物のカラクリや身近な食品の疑問について分かりやすく解説してくれていて「あ~なるほど!そんな風になってたんだ!」と、楽しみながら学べました。
添加物や加工食品については、過激に反応するのではなく、メリット・デメリットを把握し、分かった上で摂取するならそんなに神経質になる必要もないなぁと、安心することもできました。
食事は、身体を創る大切な営みであることを自覚し、自己責任で体内に入れるものを選ぶ。そのために「疑問を持って、手首の運動!!」を心がけていきたいです。
安心安全な食生活をしたいと思っている方、食品添加物に興味のある方に特におススメできる良本です。是非ご一読下さい。
私もこれから何度も読み返すと思います(^^)
(2024/12/22 03:37:57時点 Amazon調べ-詳細)